9月7日から12日まで岩手県に行ってきました。このうちボランティアとして作業をした2日間をレポートします。
3.11から1年半、自分の中で少しずつ薄れゆく記憶に不安を抱いていた頃、ボランティアに行かないかとお誘いを受けた。一度は現場を見たい。何ができるわけではないが自分なりの支援が見つかるかもしれないと決断した。
今回企画して下さった橋本さんは、できるだけ多くの人が現状を知り伝え語ってほしいという願いから東北へと車を走らせておられる。今回で10回目。今回は私を入れて5人(劇場関係者は徳持・河田・薬師寺)。私以外の4人は夜走りで15時間、私は新幹線で行き新花巻で合流。9月7日の午後1時。遠野まごころネットのボランティアセンターに入るまでの3時間、宮沢賢治記念館に足を運ぶ。記念館は賢治の深い人間像を読み取る一助となった。よだかの星の彫刻は未来に向かって力強く生きる事を表しているように感じた。
いよいよボランティアの始まり。
受付を済ませ、具体的な説明を受け、気を引き締める。寝るのは畳一枚分に寝袋、10時消灯。
6時起床、朝食は各自持参したもの、7時40分からラジオ体操、ラジオからは岩手弁のかけ声、気持ちがなごむ。参加者は150人位。大学生が目立つ。仕事の割り振り。私と河田さんは大槌町の浪板海岸の大槌フラワーロードの花壇の草取り、薬師寺君達3人はテーブル作り。
8時、リーダーの車に分乗し現場へと出発!遠野から大槌まで約1時間半、向かう道中、山を越え釜石に近づくと景色は一変する。リーダーが災害の様子を説明してくれる。建物に印されている赤い○×の意味。死体を運び出したかどうか。当時の懸命な捜索状況を垣間見る。流された橋脚、壊れた堤防、残された建物の残骸、流された家屋の跡に生える雑草。当時の凄まじい映像と重なり、胸が痛む。
作業現場は浪板海岸沿いの浜街道、綺麗な花壇が整備されている。私たちの仕事は花壇の草取り。暑い日差しを受け、草取り開始。単純作業とはいえ、かなり足腰にくる。水分をこまめに取り休憩を挟みながらの作業。正味4時間ほど、綺麗になった花壇を見つめながら流した汗と共に、人の心が和むお手伝いをさせていただいた喜びと感謝の気持ちが溢れ出してきた。
帰りはひょっこりひょうたん島の蓬莱島のある赤浜へ、6mの防波堤を乗り越えた津波が家屋を飲み込み高台まで押し寄せた跡。壊された住宅は土台だけが残り一面の雑草地。地盤沈下の様子も目の前に見る。赤浜小学校は体育館だけを残し校舎は撤去され空き地になっていた。小学校から上は津波から免れた様子。小学校の向かいの岡本商店(酒屋)は住宅部分の1階の窓にはベニヤ板が張ってあり店はプレハブで再開していた。店主の岡本さんは宝来島と壊れた民宿の上に乗った観光船はまゆうの絵を描き、復興を願いお酒のラベルとして販売。私も出来る支援としてそのお酒を買った。
その後大槌北小学校の校庭を利用した『福幸きらり商店街』にも立ち寄った。ちょうどアカペラグループ(Ihatov Voices 2012岩手沿岸公演)の演奏があるので聴いてほしいとの事。メンバーは被災県のみならず全国から集まっている若者たち。素敵な歌声に安堵感を覚えアンコール曲の「ふるさと」には胸が熱くなり自然に涙があふれてきた。。
ボランティア2日目、昨日立ち寄った赤浜地域の花壇の水遣りと草取り。道路際の流された家の土台にひまわりやコスモス、マリーゴールド、サルビアなどが植えられ花壇になっている。水道が無いので側溝の蓋を開け土のうで堰き止、たまった水をバケツで運び花壇に水をやる。花壇が広範囲にわたっているのでバケツ運びも力の要る仕事である。水遣りが終わると花壇の草取り。花壇のある場所は全て人が住んでいた所。玄関や居間、台所、風呂場と形跡がはっきりわかる。草を取る手に何かが伝わる。作業をしていると岡本商店の店主がアイスクリームを持ってきてくれた。「ごくろうさん、暑いからどうぞ!」と差し出してくれる。「うれしい!」ありがたい思いでいただいた。アイスクリームを食べながら周りの風景を見渡した時、目に入った花に心が癒される。「そうか、やっぱり花には気持をやさしくする力があるのだ」そう思えた一瞬である。この地域に立ち寄られた方々に「がんばっぺし」と優しい花たちが声をかけてくれることを願った。私達は作業終了まで心をこめて草を取った。
この場に立って、自分の与えられた仕事を精一杯させていただけたことに感謝します。
現場に来て思ったことは、いつになったら復興するのか先が見えない。地方だけの力ではどうにもならない。政治力が問われているのでは無いか。複雑な気持ではあるが自分の出来ることを今後も問い続けて行きたいと思う。全国からボランティアとして被災地に入り、長い人は当初から、そのうち受け入れ側としてリーダーの役割を果たしている。私のように始めて参加した人もいるが学生以外に何日もいる若者も目に留まる。ここでの経験を今後の人生に活かされることを願う。